『かぐや姫の物語』を観た
かぐやといっしょに全速力で駆け出したかった。叫びたかった。

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高畑勲監督の「かぐや姫の物語」を観てきた。

私の席のすぐ前にいた若い女の子2人は、さめざめと泣いていたが、わたし自身は何度かじわっときたものの、涙がこぼれるところまではいかなかった。

が、映画が終わり、席を立ってすぐ自分の様子がおかしいことに気づいた。
まるでひとしきり泣いて、疲れ果てたときのような精神状態になっていたのだ。フラフラと場内から出てきた私を見た映画館のスタッフは、「うわ〜この人、かなりやられてるな」と思ったのではないだろうか。


映像表現は動きがかろやかで、とても気持ちよかった。

さっとスケッチしたようなタッチが目に心地よく、人が、鳥が、動物が、虫が、花が、木々が、風が、命を持って、踊っている!

人物の手の、頭の、お尻の、まるみ。
笑ったときの顔。ふくいくと豊かで、やさしい。「生」というモノのまぶしさが画面から溢れまくっていた。

生命力に満ちたやわらかい色と鳥のさえずり、木々がざわめく音、子どもたちの歓声が渾然一体となって、観ているわたしを取り囲む。それは単純にアニメを見ている体験というよりも、もっと生々しくて、「そういえば子どもの頃って、世界をこういう風にとらえてたかも…」と、懐かしくあたたかいものがじょじょに蘇ってくるような感覚になった。
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前半の生の喜びが大きいぶん、
後半、都へ行ってからの、閉じ込められ感がきわだっていた。



かぐやは、黄金が手に入ったことで野心を抱いた翁に都に連れていかれ、「高貴な姫君」となるべく教育されることになる。
高貴な姫君になり、地位のある殿方に見初められて結婚することが、姫の最高の幸せだと信じて疑わない翁。(本当は自分の欲を満足させたいだけなのだが、翁はそれに気づいていない)
若干しぶりつつも、翁につきあう媼。
行動を制限され、日に日に元気がなくなるかぐや姫。

かぐやが大人のカラダになり、三日三晩のお祝いの宴が催されているところで、彼女の孤独は頂点に達する。
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「どうして私のお祝いなのに、
 わたしは御簾の中に一人きりで誰ともしゃべれないの?」

酔っ払った男たちが、どれほど美しい姫君なのか見せろ見せろという声が聞こえる。
彼らの興味はかぐやの性格や人間性などにはなく、どれくらい美しいのか、どれくらい高貴なのか、この姫君を手に入れれば自分の株はどれくらい上がるのか、ということのみ。

昔から、女の美しさや若さは取引の道具にされてきた。
まるで金や石油のように。

人より美しく生まれたからといって幸せかといえば、そんなことはない。
自分はどうでもいいと思っているのに、
男たちは勝手に女たちにランクをつけ、競わせようとする。
男に喜ばれる見た目や態度になるように、社会は女の根っこの部分を抑圧する。
女の子はあれしちゃダメ、これしちゃダメ。
女だてらに。女のくせに。女のぶんざいで。女らしく。

かぐやが怒りにまかせて屋敷から飛び出したそのとき、
私もいっしょに叫びだし、全速力で走り去りたくなった。
少女時代からのあれこれがフラッシュバックして。
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高畑勲監督は、どうして女の気持ちや苦悩がここまでわかるのか。
見ながら、これはまるでアルプスの少女ハイジだと思ったけれど、
彼(だったか、プロデューサーの鈴木氏だったか)はインタビューでまさに「この作品は日本のハイジです」と言っている。

映画や小説、ドラマ、アニメの中では、ずっと意志のある女が描かれてきた。
世間の基準にもの申し、「私はこう生きたい」と表明し、努力して状況を変えようとする女。朝の連続小説の主人公たちにしても、大河の女主人公にしても、海外文学にしても、そうだ。

それは現実が女にとってたいへん生きづらい世界だからなのだが、竹取物語の時代から(いやきっとそれよりずっと以前から)女の悩みはたいして違っていないように思え、気が遠くなるような感覚と無常観、男性がこのテーマを描いてくれたことへの感謝の気持ちなどがいっしょくたに襲ってきて、わたしは冒頭のような状態になったのだった。

かぐや姫が現実世界に幻滅し、月に帰りたいと強く思い、実際にお迎えがくるくだりは、現代の女が現実にお手上げ状態になったとたん、スピリチュアル方向に走るのとまんま同じではないか。

新月に必死こいてお願いし、占いを熟読し(なんなら独学しはじめたり。それは私だが)、将来がどうしようもなく心配になったら、瀬戸内寂聴のようにいっそ出家もありかな、なんて思ってみたりする(そういえば源氏物語にはやたらと世を嘆き、出家する男女が出てきますね)。

現実がままならないと悟ったとき、人はここではないどこかに憧れ、救いを求める。
かぐや姫はある意味、当時の悩める女性の理想だったのではないだろうか。欲も煩悩も存在しない世界に行けたら、こんなに苦しまなくてすむのに。自分以外の誰かにコントロールされたりしなくてすむのに、って。
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※雨宮まみさんの文章「『かぐや姫の物語』の、女の物語」が、わたしなんかよりずっと鋭く深く、この映画におけるジェンダー問題について切り込んでいて、泣けます。
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by aomisa | 2013-12-19 00:48 | 映画・アート・音楽・本
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